第21回日本難病看護学会参加記

先日、北海道医療大学当別キャンパスで開催された第21回日本難病看護学会に私も参加してきました。札幌市内から少し離れたキャンパスであるにもかかわらず、2日間で400名を超える参加者があったとか。

例年、非常に密度の濃い学会であり、看護職の研究発表だけでなく難病の当事者である患者・家族の意見を聞ける場でもあり、また医師の講演で勉強できる機会にもなります。

個人的に興味深かったのは、北海道の恵庭市にある恵み野訪問看護ステーションの所長でNP資格をもつ樋口秋緒さんの発表「要介護度5の難病患者に対する在宅での特定行為の実施の効果」というポスターの演題でした。

要介護5のPDや後縦靭帯骨化症の在宅療養者3名について定期受診にかかる時間や費用、患者・介護者の負担等をNPによる特定行為(気切カニューレ交換、胃ろうカテーテル交換、膀胱瘻カテーテル交換)の前後でどのように変わったのかをまとめ、大幅な負担減に繋がるが、療報酬は減った。といった内容だったと理解しています。(雪の北海道で介護タクシーで受診する大変さは東京とは比較にならないでしょう。)

私から、都内では訪問診療で医師が回るような症例だと考えるが、勤務先では訪問診療ができる医師が少ない状況であるということか?「病院から報酬減になるからやめてくれ」とは言われませんでしたか?という質問をしたのですが、回答としては、こうした状況を踏まえて院内の話し合いが行われ、病院の医師が訪問診療をしてくれるようになったそうです。ではNPに意味が無いのかということではなく、緊急時の対応などで大きな貢献ができるだろうと思います。樋口さんの前向きな活動にとても共感できる発表でした。

その一方で、在宅での特定行為についてはこのようなNP教育を受けた方や医療機関(医師主導)で積極的に行動を起こそうとしている所を除くと、一般の訪問看護ステーションでは研修を受ける段階で躊躇していて、厚生労働省や看護協会が描いているような形にはなりえない様に思います。

今回の発表のような報酬の面での齟齬とでも言うべき部分を積極的に解消していくことが必要でしょう。

 

コメントスパム対策を修正

本ブログ記事にコメントが入力できないというご意見があり、自分でログインせずにコメントしても問題ないのですが、可能性としては、スパム対策として、簡単な問題を解くような設定があったので、これを外してみました。

あまりスパムが増えるようであれば、また対応を考えます。

訪問看護は危ないのか?

このところ神戸市看護大学の林千冬先生たちのグループの研究成果がネットニュースなどでも取り上げられています。(ちなみに林先生は学会などでお話することもある良き先輩です。)

訪問看護師の5割「利用者、家族から暴力受けた」 「抱きつかれた」セクハラ被害も 神戸市看護大が調査

この記事だけを読むと、なんだか訪問看護って怖そう・・・とかそういったイメージを持たれてしまうかもしれません。

なかなか得られにくいデータなので、貴重な成果であることは間違いありません。今回の調査方法がはっきりわかりませんが、どうしても「これまでの経験」という聞き方すると毎日のようにセクハラを受けている人も「10年訪問してきて1回あったなあ」という人もまとめて「経験あり」になってしまうので、50%という数字をどう解釈するかという点が一つあります。頻度がどの程度なのかもわかると良いなあと思いました。

では病院は安全なのかというと、病院でも医師や看護師に対する暴力というものは残念ながら少なくはありません。意図的なものも、妄想やせん妄状態で意図的とは言えないような状態でのものも含め、それなり数があることが報告されています。ただ在宅は密室のなかでのサービス提供となるので、セクハラを含めた暴力行為の状況を確認したり、止められる人が他にいないという点で特徴があります。

報道ではなかなか触れてくれませんが、普段から当然のように、看護管理者にとっては対象者だけでなく、職員の安全も大事な関心事です。たとえば、必要があれば複数名で訪問をすることが報酬の中でも認められていますし、条件を満たさない場合には管理職が同行訪問したりといった形で対応していることは多いと思います。またセコムの訪問看護ステーションさんでは、携帯のボタンを押すと、セコムの警備員が急行してくれる体制を整えているとも伺ったことがあります。

報道の皆さんには、こうした取り組みにも目を向けてもらえると良いと思います。

科研費改革で在宅看護はどこへ?

現在、文部科学省が検討している 科研費審査システム改革2018 ですが、これまでの細目と新しい審査区分(小区分)には幾つかの変更点があります。

科研費データベースで過去2年間のこれまでの細目別に見た採択件数をみると、基礎2050 臨床2006 生涯発達1368 高齢者693 地域526と高齢者看護と地域看護の採択数が少ないので区分としてまとめてしまったという印象もありますが、これまで研究のキーワードとしてはいっていた「訪問看護」「在宅看護」というキーワードがなくなってしまいました。これがどのように審査に影響するのか、与えられたものだけでは分かりえないところもありますが、小児のクリティカルケアが専門の先生のところに、障害児の在宅療養支援の申請書が届いたりするような感じになるのかどうか(今までも在宅看護や訪問看護といったキーワードが「高齢者看護学」の区分に入っていることに強い違和感を感じていましたが。)

21日までパブリックコメントを受付中ということなので、下記のようなコメント(1000字以内という規定あり)を書いてみました。この部分は、著作権を気にせず自由に使って頂いても構いませんので、改革のページもお読みになって各自コメントを出して頂ければと思います。改善意見なども頂ければ更に嬉しいです。

【改革にあたっての基本姿勢】における、これまでの細目表は学術の分類を示すものではなく、科研費の審査区分であることを明確にするために新たに区分表を作成したという趣旨については、十分に納得できるものである。
しかしながら、その区分については学問領域の発展のため、できる限り公平公正な審査が担保できるものでなければならず、慎重な検討が必要である。

例えば今回の区分においても、それぞれの学問分野で一般的に用いられている分類とは異なる形でキーワードを示す、もしくはこれまであったキーワードが示されなくなることで、申請時に研究内容と(申請者が知りえない)審査員の専門分野が合致しない区分に申請してしまう確率が相対的に高まると考えられ、特に審査区分間をまたがるような研究分野において現状より不利益を生じる可能性がある。

また、平成28年度の審査細目表では別々の項目であったものがまとめられることで、申請件数が膨大となり研究内容と審査員の専門分野の不一致率が高まることが懸念される。

以上より、大区分I-中区分58:社会医学、看護学およびその関連分野において、以下のように変更することが望ましい。

  • 小区分58080の「高齢者看護学及び地域看護学関連」は、高齢者看護学と地域看護学に分け、高齢者看護学は小区分58070の「生涯発達看護学関連」に含める、もしくは独立した区分とすることが望ましい。

【理由】「生涯発達」という文言は誕生から死までの発達を意味するものであるが現状では「育成期」に特化した区分で誤解を生じやすいことに加え、公衆衛生看護学や特に在宅看護学の近年の研究内容は高齢者にとどまらず、在宅緩和ケア、退院支援、障害児や精神障害者の訪問看護などに移行しつつ増大しているため。

  • 小区分58080のキーワードには、公衆衛生看護学、在宅看護学、産業看護学、災害看護学の4つを含めることが望ましい。

【理由】地域看護学は行政(公衆衛生)看護、産業看護、学校看護、在宅看護の4つの実践領域で構成されるものと日本地域看護学会で定義しており、小区分58080のキーワードに地域看護学と公衆衛生看護学を併記した現状では誤解を生じかねず、また小区分の名称と同じ用語を使用するのでは申請者が審査区分を選ぶ際に参考となる情報量も増えないため。

皮下埋め込み型ポートのシミュレーター

首都大の在宅看護の演習科目では、皮下埋め込み型ポートに専用の針を刺して、輸液ポンプを動かしてみる演習を行っています。

実際には、これに対応するシミュレーターは多くなくこれまでは3Bサイエンティフィック社のものを使用していました。 http://www.3bs.jp/simulator/catheter/w43007.htm

値段もそこそこするのでまず2台を購入し、追加で3台目を購入したところ、実際に針を刺すポートの部品が粗悪なものになっており、2年程度で針を刺したところから輸液が漏れるようになりました。

最初に購入した1,2台目は5年以上前に購入したものですが、医療用の本物のポートを使用しているため、まだ何の問題もなく利用できます。率直に言って今の商品は買わない方が良いと思います。

値段も変わらず、最近まで前の部品の写真が掲載されていたぐらいで、何の説明もなく部品が粗悪なものになったことに不満もあり、メーカーに問い合わせましたが交換もできないということなので、こちらで現場で使用されているポートを購入して交換しようとたくらんでいます。

プロフェッショナルの養成をするのに道具が本物でないなんて、シミュレーターとしての価値がない。もっとプロ意識をもって商品を作って欲しいです。でも海外の会社だからな・・・。

どこか日本の会社でちゃんとしたものを作ってくれませんか?

白衣を捨てて街に出よう!