ケアプランは共有できてこそ


在宅看護の実習指導を毎年行っていて、同じようなことを何度も説明することは厭わないのですが、現状が改善しないことにはモヤモヤした感じがするのです。

訪問看護は介護保険のサービスとして提供される場合には、ケアマネージャーが作成するケアプランに位置付けられ、事業所にも送付されてきます。

しかし、介護保険サービスの利用者でもいくつかの疾患や状態に該当する場合には医療保険から給付されます。ケアプランの「サービス内容」の記載には、介護保険サービス以外の制度のサービスや家族などによるインフォーマルなサポートも含めて、「全体として、どのようなサービス体制が組まれているのかを明らかにすることが重要である。」(介護サービス計画書の様式及び課題分析標準項目の提示について 別紙1)となっているので、医療保険からサービス提供される場合でもケアプランに記載されている場合が多いのですが、訪問看護ステーションにケアプランが送付されてこないケースがたいへん目立ちます。

現行では、利用者と介護保険サービスの事業者については遅滞なく送付することになっていますが、他の制度の事業所に対しては義務と明記されていません。しかし、こうしたケースでは多くのサービス・事業所が導入されているケースが大半を占めます。せっかく作成した自分のケアプランは紙の上に書かれているだけでは意味がなく、共有されてこそ活用されるでしょうし、利用者さんのメリットとなるはずです。

4月の介護報酬の改定では報酬の引き下げばかりがクローズアップされていますが、こうした問題や介護予防事業の部分など内容面でも注目していく必要があると思います。
基礎から学べる「ケアマネジメント実践力」養成ワークブック

「論」を「学」にする


金曜日が年内の勤務の最終日でしたが、私は在宅看護についての話し合いのために都内の某大学まで出張してきました。

何のための話し合いかというと、看護職の養成カリキュラムの基準となっている「保健師助産師看護師学校養成所指定規則」という厚労省の省令の中では、在宅看護に関する教育は「在宅看護論」となっているのですが、これを「在宅看護学」という名称に変更できないのかなというお話でした。

学問の世界は自由なものなので、〇〇学会とか、〇〇学という名称を勝手につけて標榜していても特に問題になるということではありませんが、広く認知されるには、学問的に体系化されているかどうかとか、その分野を担う研究者が一定程度いて、研究活動が実質的に行われているのかどうかといったことが要件となると思われます。

「在宅看護論」がカリキュラムに加わったのは1996年の改正の際で、介護保険法の施行を見越してという時代背景がありました。その頃は確かに上に書いたような要件は満たしていなかったから「論」になったのだと思われます。現状はずいぶん研究者も増え、在宅看護専門看護師も誕生し、日本在宅看護学会も創設され、研究論文も増えている状況なので、それなりの立場の先生が声を上げれば、カリキュラム自体の変更はなされるのではないかという気もするのですが、皆さん真面目なので、この際にこれまでの研究成果の整理や、ほかの看護領域との違いを明確化したいというお話しだったので、今後は在宅看護の体系化を図ることを目的としていくことになりました。

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学会とお金の話


学会の理事とか大会の運営サイドの視点で、やはり気になるのはお金のことです。

おカネがかかるかどうかは、さまざまな作業をどの程度専門業者に委託するかどうかにかかってきます。昨年、某学会の編集委員長をしていた際に、どうにも仕事が処理しきれなくなり学会誌の発行が遅れてしまい、ご迷惑をおかけしたのですが、このあたりも様々な作業を委託していれば、あんなことにはならなかったのかもしれません。

大会への演題申し込みというのは、会員になってもらうよい機会ですが、今回担当する保健医療社会学会は入会金1000円と来年度の年会費8000円、参加費5000円で計14000円かかります。今年の夏にあった某学会に演題登録するときには、入会金5000円に年会費が今年度分と来年度分で計20000円、参加費10000円で35000円でした。(大学の研究費で一部支給されるとはいえ、さすがに高いなと思いました。)

職を得ている者には、それほど問題にならないのかもしれませんが、若い大学院生を呼び込むには、お金がかかるのは障壁になります。看護系は大学が増えているので、あまり問題にならないのかもしれませんが、社会学系の若手研究者には切実な問題なので、なるべく安く、でもあまり役員等の負担が大きくならないような工夫を心掛けています。

非がん患者の緩和ケアとACP


週末の在宅ケア学会もつかの間、月曜日からの実習指導が始まりました。月曜日は病院での実習指導、大学に戻ってからの卒論の指導を経て、夕方からは大学院のCNSコース向けに、本学の近隣にある梶原診療所の平原 佐斗司先生に非がん患者の緩和ケアについて講義をしていただきました。

がん患者の緩和ケアとの対比も加えながら、疾患別の特徴などをお話しいただき、最終的にはAdvanced Care Planninng を進めていく上での医師や看護師の役割などについて話し合いました。

2名いる院生のうち1名が忌引きのため、院生にとっては先生との贅沢なマンツーマン講義となりました。講義の充実ぶりを考えると、来年から他の領域の院生や教員も参加できるような形にできないか検討してみようと思います。

チャレンジ! 非がん疾患の緩和ケア (在宅医療の技とこころ)

今日の在宅看護CNSの講義


博士前期課程の在宅看護CNSコースの講義をしてきました。

今日のテーマは、「ケアマネジメント」と「訪問看護ステーションの経営と在宅看護政策」についての講義でした。

院生さんは二人とも、介護保険のケアマネジャーでもあるので、前半のケアマネジメントについては教えることもないって感じですが、そもそもケアマネジメントの理念がなんであったのか、ケアマネジャーの現状はどうなのか、何が不足しているのかなど、議論中心の講義の展開でした。

後半のステーションの経営と在宅看護政策についても、所長と事業所の新規立ち上げをしたばかりのお二人には、細かな話をしても仕方がないので、平成21年の報酬改定から訪問看護支援事業の成果のあたりを概説し、「なぜ(小規模では採算が合わないのがわかっているのに)立ち上げ当時から10人程度のステーションを意識した制度設計をしなかったのか?」とか、制度はできたもの運用面で普及しているとは言えない「看護師による居宅療養管理指導」や「療養通所介護」「複合型サービス」について議論しました。

また、CNSには地域全体を見通して考える力を求めているので、GISを使った近隣地域のサービスを含めたニーズの把握の方法や街づくりや防災といった点からも議論をしました。

本来は生活モデルを意識するはずの地域包括ケアの推進の動きの中で、「地域の病院化 道は病院の廊下で…」みたいな過度にMedicalizationされた文言が出てくるのか、今度、猪飼周平さんにも伺ってみたいと思います。病床数が減らされるからと言って病院の医療や看護をそのまま在宅に持ち込んでくることが、療養者にとって迷惑なのかどうかは分からないけど、療養者の評価をないがしろにはしてほしくないものです。

総選挙その前に


気が付いたら衆議院が解散されていて、少しは状況を理解しようと今朝はニュース等で記者会見や党首討論みたいなものを見ていました。

私だけではないと思いますが、なんでこの時期に解散?という印象が強いです。私の専門分野に関していえば「消費税の引き上げをしない」かつ「消費税引き上げ分は社会保障にあてる」ということであれば、来年からの社会保障(とりわけ介護報酬の改定)をどうしていくのかの議論を国会で進めて欲しかったと思います。

首相の会見の映像では経済指標をいくつか挙げて、特に国内の雇用が増えたことを強調していた印象を受けました。わかりやすい指標を選んでいたと思いますが、「有効求人倍率」というのは、評価の難しい指標であり、首相の会見でこれを用いて自らの業績として掲げるのはどうかなと感じました。

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第41回日本保健医療社会学会大会へのお誘い


地域包括ケアや在宅ケアにかかわる内容も多いので、こちらでも告知しておきます。

2015年5月16日・17日に首都大学東京荒川キャンパス(東京都荒川区)において、第41回日本保健医療社会学会大会を開催いたします。私も副大会長として皆様をお待ちしております。お誘いあわせの上、ぜひご参加ください。

  • 大会長:   三井さよ (法政大学社会学部 教授)
  • 大会テーマ: 「生活モデルへの転換」
  • 主な大会プログラム
  • シンポジウム 「この20年で医療はどう変化したか?
    ――生活モデル/セルフケア/自己決定」
  • シンポジスト:
    • 猪飼周平先生(一橋大学)「病院の世紀から地域包括ケアの時代へ」
    •  松繁卓哉先生(国立保健医療科学院)「患者中心/セルフケアとは何だったのか」
    • 田代志門先生(昭和大学)「死にゆく人々へのケアはどう変化したか」
    • コメンテイター:美馬達哉先生(京都大学)、戸ケ里泰典先生(放送大学)
    • 司会:吉田澄恵先生(東京女子医科大学看護学部)
  • 教育講演 「人工呼吸器からみえる医療/家庭/社会」
    • 講師: 大森健先生(IMI首都圏ブロック)
    • 司会: 鷹田佳典先生(早稲田大学)

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在宅看護学会シンポジウム(@東邦大)


11月15日に開催された第4回日本在宅看護学会学術集会のシンポジウムⅠ「在宅看護学実習はどうあるべきか」において、「本学における在宅看護学実習の現状と課題、そして今後に向けた取り組み」と題してお話しする機会をいただきました。

私は大学のカリキュラムや実習全体を含めた少し大きなところから話をしましたが、実習施設の立場からの乙坂佳代さんは、実際の指導の状況をお話しされ、新人訪問看護師の立場からの田代亞矢乃さんは学生時代の実習経験と新人としての取り組みの状況を大勢の聴衆の前で堂々と発表されておられました。全体としてはバランス良く、皆さんにお伝えできたのではないかと思います。

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公衆衛生学会総会(@宇都宮)にて


公衆衛生学会総会は公衆衛生全体の動向を知ると共に、東大の同窓の皆さんの活躍を目にする機会でもあります。今年の総会は、昨年の忙しさで演題発表はできませんでしたが、いくつかの目的をもって1日だけ参加してきました。

実務的なところでは、来週の在宅看護学会に向けて、関係の先生の研究を拝見しつつ、今後の在宅看護のアカデミックな部分をどうやって進展させていくのかというお話をしてきました。

横浜市立大の柏木先生、筑波大の田宮先生のグループでは、全国の介護保険レセプトのデータを集めた分析を始められるということで、訪問看護に関する基礎的な発表がありました。医療保険では保険者機能の強化が謳われて、レセプトやDPCデータの活用が進む一方で、介護保険レセプトを使った報告は、田宮先生のグループ以外では見かけたことが無く、法的な規制などがあるのかと、お尋ねしてみました。

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体験交流会のお知らせ


私が幹事を務めているNPO法人在宅ケア協会では、11月22日(土)の法人総会後に、住環境や街づくりといった観点から体験を話し合う会を開催します。障害がある方や高齢者の方などで体験を交換したいという方はぜひご参加ください。専門の方もコメンテーターとしてお呼びしています。

  • 時間:11:00~13:00
  • タイトル:わが家・わが街 ~だれもが社会生活を取り戻すために~
  • 参加費:無料
  • 開催場所:
    全国障害者総合福祉センター 戸山サンライズ
    東京都新宿区戸山1-22
    03-3204-3611

詳細はこちらから (事前申し込みが必要です)