「論」を「学」にする

金曜日が年内の勤務の最終日でしたが、私は在宅看護についての話し合いのために都内の某大学まで出張してきました。

何のための話し合いかというと、看護職の養成カリキュラムの基準となっている「保健師助産師看護師学校養成所指定規則」という厚労省の省令の中では、在宅看護に関する教育は「在宅看護論」となっているのですが、これを「在宅看護学」という名称に変更できないのかなというお話でした。

学問の世界は自由なものなので、〇〇学会とか、〇〇学という名称を勝手につけて標榜していても特に問題になるということではありませんが、広く認知されるには、学問的に体系化されているかどうかとか、その分野を担う研究者が一定程度いて、研究活動が実質的に行われているのかどうかといったことが要件となると思われます。

「在宅看護論」がカリキュラムに加わったのは1996年の改正の際で、介護保険法の施行を見越してという時代背景がありました。その頃は確かに上に書いたような要件は満たしていなかったから「論」になったのだと思われます。現状はずいぶん研究者も増え、在宅看護専門看護師も誕生し、日本在宅看護学会も創設され、研究論文も増えている状況なので、それなりの立場の先生が声を上げれば、カリキュラム自体の変更はなされるのではないかという気もするのですが、皆さん真面目なので、この際にこれまでの研究成果の整理や、ほかの看護領域との違いを明確化したいというお話しだったので、今後は在宅看護の体系化を図ることを目的としていくことになりました。

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学会とお金の話

学会の理事とか大会の運営サイドの視点で、やはり気になるのはお金のことです。

おカネがかかるかどうかは、さまざまな作業をどの程度専門業者に委託するかどうかにかかってきます。昨年、某学会の編集委員長をしていた際に、どうにも仕事が処理しきれなくなり学会誌の発行が遅れてしまい、ご迷惑をおかけしたのですが、このあたりも様々な作業を委託していれば、あんなことにはならなかったのかもしれません。

大会への演題申し込みというのは、会員になってもらうよい機会ですが、今回担当する保健医療社会学会は入会金1000円と来年度の年会費8000円、参加費5000円で計14000円かかります。今年の夏にあった某学会に演題登録するときには、入会金5000円に年会費が今年度分と来年度分で計20000円、参加費10000円で35000円でした。(大学の研究費で一部支給されるとはいえ、さすがに高いなと思いました。)

職を得ている者には、それほど問題にならないのかもしれませんが、若い大学院生を呼び込むには、お金がかかるのは障壁になります。看護系は大学が増えているので、あまり問題にならないのかもしれませんが、社会学系の若手研究者には切実な問題なので、なるべく安く、でもあまり役員等の負担が大きくならないような工夫を心掛けています。

非がん患者の緩和ケアとACP

週末の在宅ケア学会もつかの間、月曜日からの実習指導が始まりました。月曜日は病院での実習指導、大学に戻ってからの卒論の指導を経て、夕方からは大学院のCNSコース向けに、本学の近隣にある梶原診療所の平原 佐斗司先生に非がん患者の緩和ケアについて講義をしていただきました。

がん患者の緩和ケアとの対比も加えながら、疾患別の特徴などをお話しいただき、最終的にはAdvance Care Planninng を進めていく上での医師や看護師の役割などについて話し合いました。

2名いる院生のうち1名が忌引きのため、院生にとっては先生との贅沢なマンツーマン講義となりました。講義の充実ぶりを考えると、来年から他の領域の院生や教員も参加できるような形にできないか検討してみようと思います。

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今日の在宅看護CNSの講義

博士前期課程の在宅看護CNSコースの講義をしてきました。

今日のテーマは、「ケアマネジメント」と「訪問看護ステーションの経営と在宅看護政策」についての講義でした。

院生さんは二人とも、介護保険のケアマネジャーでもあるので、前半のケアマネジメントについては教えることもないって感じですが、そもそもケアマネジメントの理念がなんであったのか、ケアマネジャーの現状はどうなのか、何が不足しているのかなど、議論中心の講義の展開でした。

後半のステーションの経営と在宅看護政策についても、所長と事業所の新規立ち上げをしたばかりのお二人には、細かな話をしても仕方がないので、平成21年の報酬改定から訪問看護支援事業の成果のあたりを概説し、「なぜ(小規模では採算が合わないのがわかっているのに)立ち上げ当時から10人程度のステーションを意識した制度設計をしなかったのか?」とか、制度はできたもの運用面で普及しているとは言えない「看護師による居宅療養管理指導」や「療養通所介護」「複合型サービス」について議論しました。

また、CNSには地域全体を見通して考える力を求めているので、GISを使った近隣地域のサービスを含めたニーズの把握の方法や街づくりや防災といった点からも議論をしました。

本来は生活モデルを意識するはずの地域包括ケアの推進の動きの中で、「地域の病院化 道は病院の廊下で…」みたいな過度にMedicalizationされた文言が出てくるのか、今度、猪飼周平さんにも伺ってみたいと思います。病床数が減らされるからと言って病院の医療や看護をそのまま在宅に持ち込んでくることが、療養者にとって迷惑なのかどうかは分からないけど、療養者の評価をないがしろにはしてほしくないものです。

総選挙その前に

気が付いたら衆議院が解散されていて、少しは状況を理解しようと今朝はニュース等で記者会見や党首討論みたいなものを見ていました。

私だけではないと思いますが、なんでこの時期に解散?という印象が強いです。私の専門分野に関していえば「消費税の引き上げをしない」かつ「消費税引き上げ分は社会保障にあてる」ということであれば、来年からの社会保障(とりわけ介護報酬の改定)をどうしていくのかの議論を国会で進めて欲しかったと思います。

首相の会見の映像では経済指標をいくつか挙げて、特に国内の雇用が増えたことを強調していた印象を受けました。わかりやすい指標を選んでいたと思いますが、「有効求人倍率」というのは、評価の難しい指標であり、首相の会見でこれを用いて自らの業績として掲げるのはどうかなと感じました。

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白衣を捨てて街に出よう!