先日の投稿でご紹介した日本在宅看護学会主催の「ICTを活用した死亡診断に関わる看護師研修制度」についての研修セミナーについて、医学書院で発行している週間医学界新聞 第3252号 2017年12月11日でご紹介して頂ききました。
「未分類」カテゴリーアーカイブ
「ICTを活用した遠隔地からの死亡診断with看護師」制度?の中間まとめ
先日の学会にあわせて開催した研修セミナーでは厚生労働省のご担当者にお出でいただき、「ICTを活用した死亡診断に関わる看護師研修」制度について丁寧なご説明をいただきました。
 その結果を私なりにまとめるとタイトルに示したような制度であることがよくわかりました。
講演の資料に加えて、ガイドライン自体も配布しましたので、参加者のみなさんも資料をよく読んで頂き、質疑もかなり活発に行われました。
 ガイドラインへの質疑を大別すると、
 「条件が厳しいので制度が利用できるのは離島などに限られそうだが、必要とされているのは特養などの施設など別の所ではないのか?」
 「実施にあたっての費用が診療報酬等でカバーされるのか?必要な機器は誰が用意するのか?」
 といった点であったかと思います。
 座長をしていた私からも
 「人的資源の乏しい離島の看護師が研修を受ける場合、代理の人員を用意するなどの手立てが必要ではないか?」や「除外基準に反して進めてしまった場合などの責任はどうなるのか」について質問をしました。
あくまでも私なりの理解ですが、厚生労働省の中でもこれらについてはかなり議論され、関係各所からの意見も踏まえた結果が今回のガイドラインといえるようです。まずはここから始めようということかと思いますが、今後の多死の状況を考えると、今回のような遠隔で医師が診断するのを看護師が補助するというスタイルではなく、医師との協働の下でトレーニングを受けた看護師が代理で死亡診断をするというスタイルにしないと対応できないのではないかと思われます。
今回のガイドラインに基いて行われる研修の募集も、全国訪問看護事業協会で始まっています。
 今後も動きを見守っていきたいと思います。
明日から在宅看護学会学術集会
明日から2日間、第7回日本在宅看護学会学術集会が甲府市の山梨県立大学で開催されます。
紅葉の季節ではありますが、ぜひご参加ください。
私が関わっているものは以下の内容になります。
- 交流集会2 「訪問看護ステーションでの新しい実習のあり方」
- 学会企画研修セミナー:多死時代を支える看護師の役割-ICTを活用した死亡診断の理解・普及に向けて-講師:浅田祥乃(厚生労働省医政局看護課看護サービス推進室係長)座長:清水準一(首都大学東京大学院)
「ICTを活用した死亡診断に関わる看護師研修」の研修を開催
11月25日、26日に山梨県立大学で開催される第7回日本在宅看護学会学術集会の会期中に、学会の研修委員会企画として研修セミナー「多死時代を支える看護師の役割 ~ICTを活用した死亡診断の理解・普及に向けて~」を開催します。
このブログでも何回か取り上げた、離島やへき地において、医師が不在の場合に看護師がICTを用いて医師と連絡を取り合い死亡診断を補助する制度が動き出しますが、現時点では厚生労働省のホームページでもガイドライン以外の詳細な情報は掲載されておりません。本研修ではこの制度を所管する厚生労働省医政局看護課サービス推進室から講師をお招きして講演をしていただいたうえで、質疑応答を予定しており、おそらく会場には研修を開催する団体の関係者なども参加すると思われるので、具体的かつ詳細な情報を得る貴重な機会となると思います。 ちなみに私が座長をします。
参加費等の詳細については、PDFファイルをごらんください。
在宅看取りの研修制度への要望
前回、訪問看護師は死体の撮影係ではありませんというエントリーを書き、大変多くの方に閲覧していただいたようです。
誤解があるといけませんが、私はこの制度に「反対」なのではありません。むしろ、かつての看護師による特定行為の研修制度の検討の際には在宅看護CNSコースの担当教員として、在宅での看取りがうまくいくように死亡診断の補助、代理といったことができないかと提案したりもしていました。
先日紹介した記事の他にも、中日新聞で「死亡診断 遠くからでも 端末通じ看護師が医師に報告 「自宅で最期を」支える」という記事が、日経メディカルでも「いよいよ始まる『看護師による死亡確認』」という記事が掲載され、詳細が分かるようになってきました。
 条件として
「5年以上の勤務実績に加え、3年以上の訪問看護の経験などが必要」
であり、早ければ9月ごろから1週間程度の看護師を対象とした研修が始まるとのことです。
また、中日新聞の記事では
ただ、死亡診断に際しては、虐待などによる異状死かどうかの判断は高度な専門性が必要で人材育成が欠かせない。ICTの活用は患者の機微に触れるデータを扱うため、情報管理も慎重さが求められる。なにより診断を委ねる医師と看護師が患者や家族から信頼されていないと広がらない。厚労省は今後、実施された全ケースを検証し成果や問題点を洗い出す。
とまとめられていましたが、看護師に微妙なケースの異常死かどうかの判断力を強く求めていく方向ではなく、通常の診療や訪問看護の中でそうした状況がないことを確認して、チームで対象を選定していく力を育む方向性の方が制度がうまくいくように思われます。
そもそもの話、在宅での看取りというものをイメージできる人のほうが少ないと思うのですが、家族に見守られながら亡くなるというようなケースばかりではなく、老衰の方だと朝に家族から呼吸が止まっていると報告があって、看護師が訪問し、医師を呼ぶなどという場合もよくみられます。そのような場合に医師は形式的に脈をとってみせるぐらいだと思います。一般的なケースでは、何をもって死亡確認に必要な情報とするのかは担当医の判断に任せるものとして、心電図や写真といったものを必須にするのは、その場での違和感もあり過度な医療化であるとともに、手間を増やすだけでそれほど意味がないと私は考えます。
また今回の看護師による代筆を過度に強調して、現場でこれまで行われてきた医師と看護師の間での工夫を制限するようなことにならないようにすることも大切だと思います。
私には以前学会で伺った在宅医の先生のお話が思い出されます。その先生は関東の山奥でお父様の代からの診療所を受け継ぎ、一人で周辺10km強ぐらいの訪問診療をされておられ、診療所やステーションの看護師も同じ小学校や中学校の同窓生だそうです。お忙しい先生の楽しみはマラソンで、東京マラソンの抽選にあたり、いざスタートというときに、患者さんが亡くなりそうだと看護師から携帯に連絡があり、先生は帰ると伝えたところ、患者さんの配偶者が代わりに電話にでられ「先生、帰ってこなくて大丈夫だよ、ゆっくり待ってるから、頑張って走ってきて」と言ってくださったそうです。先生は結局マラソンを完走され、ゴールしてから急いでお宅に向かわれたというお話でした。
普段は家族と遠出もできずに診療に勤しんでおられる医師のこんな場面を「楽をしている」と言ってはいけないのではないかなと思います。こんなケースで、みんなが納得して看護師が代理で死亡診断書にサインをして、ケアを始められたら良いのになあと思いました。
また日経メディカルの方では、この制度への期待だけでなく、医師同士の連携など看取りの体制の強化が先ではないかとか、12時間以内に診察できないといった要件は厳しすぎる、離島では船が出ないと火葬できない、などの具体的な疑問点や課題が挙げられていて、とても勉強になりました。
あれこれ言っていても仕方がないので、まずは説明を良く伺えるように11月に山梨で開催される第7回日本在宅看護学会学術集会に合わせて開催される学会の研修で、厚労省の担当者にお話ししていただくことにしました。関心のある方はぜひご参加ください。
