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新・生き方としての健康科学を刊行

これまで、大学院時代の研究室の先輩方がアイディアを出され、大学の教養レベルの健康に関する教科書として好評を博し第5版まで改訂が進んだ「生き方としての健康科学」が「新・生き方としての健康科学」として4月に刊行されます。

私も新版の発行にあたり、著者の一人に加えていただき、医療と社会的なルールについての章を担当し、移植医療について執筆しています。また生殖医療やゲノムの部分については、同級生だった山口大学の藤村一美さんに協力していただき、かなり充実した内容となっています。コラムや図表も多めに配置し、教養レベルの分かりやすさを意識しながらも私達の健康と生活を多面的に捉えた物となっていますので、どうぞ一度お手にとって見てください。

国家試験から今後の教育の方向性を考える

今年の国家試験は「出題傾向が変わった」的な反応が受験生から見られたようで、ネットニュースでも取り上げられたりしていました。

「在宅看護論」に該当する出題は14問ぐらいでしたが、少し考えることになった出題がありました。

 Aちゃん(6歳、女児)は、重症の新生児仮死で出生した。誤嚥性肺炎で入退院を繰り返しているため、今回の入院で経鼻経管栄養法を導入し、退院後は週1階の訪問看護を利用することになった。現在は四肢と体幹の著しい運動障害があり、姿勢保持が困難で、移動及び移乗は全介助である。声かけに笑顔はみられるが、指示に応じることはできない。

母親は「Aは来年の4月には小学校に入学する年齢だけど、入学に向けてどうすればよいのか分からない」と訪問看護師に相談した。
訪問看護師が行う援助として適切なのはどれか。

  1. 自宅に教員を派遣できる小学校に連絡する。
  2. Aちゃんが入学できる特別支援学校を紹介する。
  3. 父親に仕事を調整してAちゃんの送迎をするよう勧める。
  4. 教育委員会に小学校入学に関する相談をするよう勧める。

学齢期前の障がい児の就学に関する出題は、小児の訪問看護に関わる看護師の中では大切な事項であり教育機関との連携のなかでの発達を考える上でも良い問題だと思います。その一方で、これが全ての看護学生が知るべき知識という位置付けだといわれると、教育に力を入れている私達でも自信が持てません。

国家試験出題基準の見直しが予定されているようですが、今後、場面は在宅だが内容は他の専門領域に関する出題という形が増えるようであれば、教育の仕方も色々変えていかないといけないのかもしれません。

旧サイトを閉鎖します

旧サイトの情報も閲覧できるようにしてきましたが、サイトを表示させているCMSのシステムが最近、更新されなくなってきたため、セキュリティの観点から、閉鎖する方向で考えています。

旧サイトの情報でレストアできるものは、こちらのサイトに活かしていこうと思いますが、多少手間がかかりますので、責任を持って対応できるとはいい難い状況ですので、ご容赦ください。

避難解除地域で一人、訪問看護を提供する選択肢

卒業生の訪問看護師の方から、ご相談をいただきました。

同じような質問をお持ちの方もいると思いますし、自分の理解に誤りがあるかもしれないので、ブログに公開する形でお返事します。

訪問看護ステーションの開設には常勤換算で2.5人の看護職が必要となります。規制緩和とのからみで、この縛りを1名にしたらどうかという議論は有りましたが、サービスの質の維持といった観点から現在は立ち消えとなっています。

質問は福島で放射能汚染がある東京23区の2/3ぐらいの広さの地域に今後避難指示が解除され高齢者を中心に住民が戻って来ると想定されるが、地域には非常勤医師が時々来る診療所が一箇所、周辺の市には病院がある程度だそうです。こうした場所で訪問できる看護職が1名だとして、どうしたら訪問看護を提供できるのか?ということでした。

最終的には自治体の判断になるので、自治体と相談してくださいとしか言いようがないのですが、制度的な選択肢としてはいくつか考えられます。

  1.  地域の診療所もしくは近隣の病院の協力を得て、医療機関からの訪問看護を提供する。
    (医師との連携、指示も必要なので、最も無難なところ。)
  2.  理解のある周辺の訪問看護ステーションと相談をして、当該地域にサテライトを設置する。
  3.  介護保険法42条の規定を用い、特例居宅サービス費
    (介護保険法第42条の仕組みを用いる。自治体の指定が必要となること、法制度的には離島や過疎地域に限定されているため、そうした地域に該当するかどうかの判断が必要なこと、医療保険からの給付ができないことなどが課題)
  4.  よくわからないけど、政治家に頼んで「特区」や「例外」を作る。
    (震災直後から数年の間は被災地で例外的に一人開業が可能でした。ただ、今はある程度周辺の医療介護体制が立て直されてきているので、上の制度を使うことになりそう)

こんなところだと思います。

 

2017年の御挨拶

皆様、明けましておめでとうございます。

今年度も、在宅看護学の研究・教育に邁進したいと思います。年頭にあたり少し考えていることをまとめておこうと思います。

昨年は当初想定していなかった教育上の担当がかなり増えたこともあり、なかなか日中に、対象先を回ったり研究補助者を招いて準備をすすめる余裕がありませんでした。このあたりは、今年修正していきたいと思います。その代わりというわけではありませんが、夜に一人でもできる執筆作業はいくつか進めました。

年内に出した「在宅新療0→100」の解説のほか、3月までの間に医学書院の在宅看護論のテキスト、恩師らの仕事を引き継ぐ形で「生き方としての健康科学」の改訂版、そしてまだ執筆中ですが、一昨年のコミュニティケアの増刊号で取り上げた実習の特集が書籍化される予定で、内容を新しくすると共に一部内容が追加される予定です。

自分の研究については、現在のGISの科研をまとめるか延長していくことと、生体肝移植のドナー調査が再開しそうなので分析、論文化に尽力したいと思います。(ここで施設別のマルチレベル分析もできるかな)

教育については、4月からの新しい態勢で、質を落とさずにどのようにやっていけるのか、大変懸念を残しています。投入する資源を少なくして同じ成果を残せる方が不思議なのだとも思います。なかなか答えの出ない話です。大学院に関しても在宅看護CNSの養成は本学ではまとめの時期に入ると思いますが、やはり昨年度の状況を踏まえると修了生の看護協会の試験について何らかの支援をしていかないといけないのかもしれません。本学単独ではなく学会での活動などともうまく結びつけて行けると良いかなと思います。

社会貢献という点では、NPO法人在宅ケア協会での幹事を昨年の任期満了の時点で退任することに致しました。また学会活動では4年間務めてきた日本保健医療社会学会の理事についても今年の5月で退任となります。昨年からお引き受けしている日本在宅看護学会の理事については当面続くようですので、研修担当として現場の方、研究者向けにどのような研修を組んでいくのか検討してゆきたいと思います。

色々、これまでの状況を振り返り、昨年末に私なりに一つの決断をしました。これがどのような結果になるのか私にも良くわかりませんが、自分にできることや仕事の方向性がそんなに変えられるものではないと思います。これまで忙しさにかまけて調査研究を避けてきてしまったけれど、やっぱり自分の得意分野は調査研究かなと思ってみたり…と不惑を数えで4つ過ぎてもまだ惑うことばかりです。こんな私ですが今年もどうぞお付き合いください。