在宅での特定行為に向けて

保健師助産師看護師法の改正に伴い、10月から看護師による特定行為の研修が始まります。

これに関わっておられる方が周囲に多くて、なかなかコメントしづらい話題ではありますが、より良いものにしていくには議論を継続していくことが大切だと思うので、現時点での考えをまとめておきます。(認識の誤りも含めてご意見をいただきたいです。)

この話題にあまり詳しくない方は、いくつかのサイトをご覧になるとよいと思います。

昨日、週刊朝日の「特定看護師に「実情に合わない」の声 在宅医療どうなる?」という記事が.dotというサイトに掲載されていました。

見出しには「特定看護師」と書いてありますが、特定看護師という資格ができるわけではありません。10月から始まる研修を受けた看護師は医師の包括的な指示の下で、これまで医師でなければしてはいけない、もしくは明確ではなかった行為を看護師も行ってよいという制度になります。

記事の中でちょうど春に東大の看護の懇親会で真田教授からコメントを求められた時にお答えしたことと同じことを聖路加の菱沼先生がまとめられています。

ーチーム医療の推進というより医師の人手不足を補う内容に終始しています。看取りを含め、これから在宅医療には看護師にもっと踏み込んだ内容が求められていたのではないか。たとえば死亡診断などは、今後切実な問題になるはずです。

将来的に在宅で必要とされうる行為として死亡診断(またはその事前段階の認証)といったことを、数年前に在宅CNSの部会の意見として看護系大学協議会から問い合わせがあった際には回答に盛り込んでいただきましたが、残念ながら今回の行為には入りませんでした。確かに死亡診断は医師でなければできない重要な行為ではあるのですが、医師がすぐそばにいる環境ではない在宅では、死後硬直のタイミングなどもあり、死後のケアをすることと絡んでくる内容なので、議論してほしいと思っていました。

今回の特定行為の中には、薬剤量の調節のように医師との協働の中で在宅ではすでに行われてきたこともあり、病院と在宅では患者の状態もリスクに対応できる状況が違うので、医療行為でまとめることには若干無理があります。更に病院では、組織としての問題意識やイニシアティブがあれば、一体的に動けますが、在宅ではたくさんの医師と連携して動きますから、特定行為の実施を導入する際にはかなりの労力を必要とするだろうと思います。「チーム医療の推進」をテーマととする検討会の結果にしては医師の協力の義務化といった話がないようなので、在宅の看護師が研修を受けても無意味にならないのかという懸念があります。

また10年間で10万人を養成するという話が出てきたため、現場の看護師が減ることにならないのかであるとか、研修の内容が形式的なものになるのではないかといった懸念もあります。

以上のことから、在宅医療・看護においては、まだまだ検討課題の多く、運用の状況を注視し、必要な修正を加えていく必要があると思います。少しネガティブな指摘が多かったかもしれませんが、この議論のために医療界全体で膨大な時間と労力が注がれているので、活用できるところは活かしていきたいと思います。

なお日本在宅看護学会で、特定行為に係わる看護師の研修制度」と在宅看護での活用と題するセミナーを6月27日開催する予定だそうです。講師として、厚生労働省から習田由美子氏、また試行事業に参加した現場の管理者からの発表もあるようです。関心のある方はご参加されるとよいのではないでしょうか。

看護師等の届出制度について

3月末に「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令」というタイトルのとても長い名称の省令が厚生労働省から出され、今年の10月から看護師が退職するときに各都道府県のナースセンターに名前などを登録することが努力義務となりました。

届け出をする機会として

  1. 病院などを離職した場合
  2. 看護師等の業務に従事しなくなった場合
  3. 免許を取得後、すぐに看護師等の業務に従事しない場合

の3パターンがあり、学生が卒業後すぐに働かない場合には、学校などが変わって届け出ができることになりました。

恐らく助産学専攻科や大学院に学生進学するケースが該当すると思います。今年はキャリア支援関係の委員なので、まずはこれが大学としてできるようにしないといけませんね。

神戸の病院での生体肝移植のニュース

移植については以前よりは少し距離を置いているとはいえ、いつも学生には、日本の肝臓外科は世界でもトップレベルだと話してきましたし、今もほとんどの施設はそうであろうと思いますが、先日の群大での腹腔鏡の件に続いての今回ですので、話題にしづらくなってきました…。

今回がどのような原因によるものであるのかわかりませんが、これまでも日本肝移植研究会ではイレギュラーな事象が発生した時にはすぐに調査委員会を作って検証してきましたし、施設側もその調査に協力してきた歴史があります。移植医療というものが日本では必要以上に疑問視されていた経緯を踏まえて、市民への説明責任を他の学会、専門分野以上に意識している医療職の集団だと思っていますので、原因の究明を適切に行っていただけるものと期待しています。

私はその肝移植研究会の生体肝移植の肝臓提供者(ドナー)を対象とする第2回の全国調査を実施する委員をしています。
その1回目の調査でも色々なことがわかりました。
肝移植は重症肝不全患者を対象に行われる治療です。術前の状態が悪ければ本人・家族のみならず医療職も救命したいと強く願うわけですが、術後の成績は悪くなる傾向になります。また早い時期に手術すれば成功率は上がりますが、肝移植では術後間もない時期の死亡率が比較的高いため、まだ元気だったのに亡くなってしまうという方も確実に存在します。
前回の調査では、ドナーの手術への満足度は自分自身の回復と患者の回復、そしてそれらの相互作用が影響していることがわかりました。
つまり、ある程度患者の回復が見込めない生体肝移植は、単にドナーに身体的な術創や内部の損傷による侵襲を与えるだけではなく、術後の精神状態を悪化させるリスクがあると考えられます。
肝臓外科医たちの英知と普段の努力によりこの四半世紀で手術成績が著しく改善した現在においても、ドナーの問題を絡めると手術適応の判断の難しさは不可避かつ本質的な課題であると思います。

生体肝移植、患者7人中4人死亡…神戸の新病院

ワークステーション用のグラフィックボード

GISの描画速度がもう少し上がらないかなと感じていたので、新年度の研究費も使えるようになり、ワークステーション用とされているQuadro K620を購入しました。displayport対応のボードが初めてで、ケーブルを買い忘れてしまいましたが。

ハーフサイズの筐体にも入る大きさなのに、なかなか高性能です。凄い早いというより、予備力が大きいというのか、大型の2画面表示で動画を見ながらでもサクサク描画してくれます。

繰り返し表示させないといけない場合もあるので、だいぶストレス改善になりそうです。

日本在宅看護学会誌への論文掲載

昨年の第4回日本在宅看護学会学術集会のシンポジウムでお話しした内容を基に一部加筆した原稿が日本在宅看護学会誌第3巻2号に掲載されました。

タイトルはベタですが「首都大学東京における在宅看護学実習の目標と進め方 -現状と今後の課題-」というものです。在宅看護の実習に興味をお持ちの方は、訪問看護ステーションの乙坂佳代さんと学生の立場で書かれている田代亞矢乃さんの原稿も合わせてお読みになることをお勧めいたします。

大胆に店開きしてしまったので、気恥ずかしくもあるのですが、シンポジウムの後、とある大学の教員の方から、「シンポジウムを聞いた卒業生から『私も首都大で在宅の実習をしたかった』と言われちゃったのよ」とコメントをいただき、ありがたく思いましたが、そんなことが言える師弟関係をお持ちの先生も大変うらやましく思いました。